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「あら、ナツミなら中華料理屋さんに働きに行ったわよ」

　レイナが二階の部屋のベッドを整えながら言った。

「働きに？ あっ……」
「ごめんね、ヒカル……ちょっと言いにくいんだけど、生活費がね……」

　ヒカルはレイナが何を言おうとしているのかすぐに察した。

「ううん、こっちこそすぐに気づかなくてごめんねっ……」

　考えてみれば、そうだ。最初は一晩だけ泊まるつもりだったのに、レイナの好意に甘えてズルズルと……。

「ごめんね、レイナ。私も働きに出て、今までお世話になった分払うからっ……」
「ううん、いいのよ。今までは色々あって働く余裕もなかったし。でもナツミも戻ってきてやっと落ち着いたじゃない？ だから……」
「レイナ、ありがとう。私頑張るね！」

　──とは言ったものの、自分はナツミみたいに愛想がいいわけでもないし器用でもないので、接客業は無理だ。

「こんなことになるならスカウトの話、受けてれば良かったわね」

　レイナはゲンブ＆ウラユのマネージャーのサチからスカウトされたことを思い出した。

「あの時は楽しかったよね」

　ヒカルもレイナと一緒に漫才したことを思い出し、懐かしい気持ちになった。

「あ、そうだわ。あの赤いリボンは？」
「あっ……」

　そういえばレイナに買ってもらった赤いリボンがいつのまにかなくなっていた。