テキストサイズ

ぼっち─選択はあなたに─

第26章 黒い犬【選択8】

「ヒカルさん、ご存知なんですか?」
「あっ……うん、ちょうどさっき行ってきたばかりで……」
「ロイドに会ったんですか!?」

 いきなりアクアに食い気味に言われて、ヒカルはたじろいだ。

「あ、いえっ……知り合いは別の人で……」

 まさかラザニーア王国の王子と会っていたなんて、さすがに言えない。

「そうですか……」
「お弁当はそのロイドさんという方に渡せばいいのでしょうか?」

 ミーナの問いに、アクアは頷く。

「討伐隊のロイドに渡してほしいの……」
「承知しました」

 ミーナとヒカルは頭を下げると、お弁当を持って歩き始めた。
 ヒカルはアクアの様子が少し気になり、後ろを振り返る。アクアは不安そうな顔をしながらずっとこっちを見ていた。

「なんだか訳ありって感じがしますね」
「えっ?」
「家族や恋人なら、お弁当は自分で渡しにいきませんか?」
「あ……そうですよね」
「果たしてこのお弁当を、ロイドさんが受け取ってくださるのか……」

 ミーナの口の端が僅かに上がった。

 討伐隊本部に着くと、朝よりも兵士の数が減っているような気がした。恐らくリュージンと共に王都に帰還したのだろう。

「すみません、ロイドさんはいらっしゃいますか?」

 今度はヒカルが受付に問い合わせる。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ