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ぼっち─選択はあなたに─

第26章 黒い犬【選択8】

「良かった、受け取ってくれたのね……」
「はい……」
「彼、喜んでくれた?」
「……っ……」

 その質問にヒカルは言葉を詰まらせる。
 助け船を出してもらおうとミーナに振り返るが、ミーナはただ微笑んでいるだけだった。

「あのっ……ありがとうって……」
「ふっ……無理しなくていいのよ。ただ一応聞いてみただけ。私は彼に嫌われているもの」
「え?」
「お弁当を届けてくれて、ありがとうね」

 そう言うとアクアは、寂しそうな顔をしながら扉を閉めた。

「あっ……」
「アクアさん、自分が迷惑だってことわかってたみたいですね」
「……」
「わかってるのに、どうしてわざわざ嫌われるようなことをするんでしょうか」
「……」

 ヒカルは重いため息を吐いた。
 アクアにあんな顔をさせてしまったことに後悔しかない。

「じゃあ、修道院に戻りましょうか」

 ミーナは変わらず笑顔だ。
 ほんの些細なことで感情が激しく揺れる自分とは違い、なんでも受け入れる余裕さがある。だからできればミーナから伝えて欲しかったのに……。

「お疲れ様、ヒカル。どうだった? 初仕事は」

 修道院に戻ると、受付で待っていたユズリノに声をかけられた。

「えっと……意外と大変だなぁって」
「ああ、アクアさんのことね」
「知ってるんですか?」
「ええ、有名よ。彼女、何回か依頼してきてるもの」
「えっ!」


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