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「下がってください」

　そう言いながらヤクモは剣を抜く。

「ま、待ってください！　その人は人間っ──」
「残念ですが、もう手遅れです」

　ヤクモが剣を抜いたと同時に、シャドー化した男が再び襲いかかってきた。ヤクモは触手攻撃をヒラリとかわすと、剣を振り下ろし、更に掌から炎を出した。

「うっ……うわあああああっ！！」

　一瞬だった。
　一瞬で、男は炎に焼かれて消滅した。

「……あっ……あんたぁぁぁぁ！！」

　一部始終を見ていた女が灰となった男を見て泣き叫ぶ。誰もが信じられないという顔をしていた。

「あ、あいつ……ヘンデルを焼き殺しやがった！！」
「いやでも、ヘンデルはシャドー化してた……」
「いや、あいつは人殺しだ！！」
「というか、あの娘も変な光を発してたな」
「なんでこんなことにっ……」
「そもそもこの町にシャドーが現れたのって、あの娘がこの町に来たからじゃないか！？」
「──！？」

　住民たちの怒りが、なぜかヒカルに向けられる。

「ああっ……言われてみれば、あの娘とナツミという娘が現れてから、シャドーが現れるようになったんだ！！」
「奴らは人を惑わす悪魔だ……いや、魔女だ！！」
「魔女を捕まえろ！！」

　全てがこじつけだった。
　怒りとショックで、やり場のない怒りをヒカルにぶつけることで、人々は冷静さを保とうとしていた。