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ぼっち─選択はあなたに─

第27章 西の森【選択9】

「殿下はなんの迷いもなく『オレはいつでも心の準備はできている。もしお前と戦って負けても、お前を助けたことは絶対に後悔しない』と言ったんです」

 ヤクモは目を細めて笑っている。

「えっと、リュージンらしい……のかな、優しいというか……」
「頑固なんですよ」

 ヒカルは目を瞬きする。

「彼はスパイである私のためにも、責任を果たそうとしていたんです」
「……」
「スパイである私が使命を果たさなかったと知られれば、私は教団に殺されてしまいますから」
「!」
「でも最初から、私は奴らの捨て駒に過ぎなかったのです。ならばこの命は、殿下をお守りするために使おうと思いまして──」

 まさか二人の間にそんなことがあったなんて──。

(自分を殺そうとしている相手を助けるなんて、リュージンは強いな……。ううん、きっとリュージンだって、色々悩んだり葛藤したりしたに違いない……)

「ヒカル様、私はあなたが自分で決めたことなら従うつもりでいます。きっと殿下も背中を押してくれるでしょう」
「ヤクモさん……」

 それはとても心強い。
 でも『自分で行動を決められない』呪いをかけられている自分が、何かを決めるなんてできるんだろうか──。

 その時、ヤクモが扉に目を向けた。

「──誰だ」

 低い声でそう言い放つと、ヤクモは赤い瞳で扉を睨み付けた。



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