テキストサイズ

ぼっち─選択はあなたに─

第27章 西の森【選択9】

 ロイドは抱きしめるアクアにゆっくりと目を向ける。

「もう、あなたのいない世界なんて、耐えられないの」

 アクアは涙を流しながら、ロイドの頬を両手で包んだ。

「……アクア……」

 その瞬間、ロイドの身体を突き破るようにして、黒い触手が四方八方に飛び散った。
 そして目の前のアクアを一瞬で飲み込み、捕食してしまった。

「──っ!」

 ヒカルはその光景を見て、胃の中のものが逆流してくるのを感じた。

「うっ……」

 まさかロイドがシャドーに身体を奪われていたなんて……もしかしてそのせいで記憶を?
 もっと早く気づいていれば、二人を死なせることはなかった?
 そんな思いが頭の中をグルグル駆け回った。

「あーあ、二人とも死んじゃいましたね」

 いつの間にかマナミがそばに立っていた。

「エメラルドの石があれば、ロイドさんのシャドー化を直せたかもしれないのに」
「!」
「アクアさんまで死なせてしまって残念です」

 マナミは笑っている。
 ヒカルはえずきながら、マナミを睨みつけた。

「あなたは人の命を……なんだと思ってるんですかっ……」

 しかしマナミには何も響いてない。

「あなたこそ、人ひとりも助けられないで、それでも神の子なんですか?」
「──っ!」
「そっちのカラスも、もう死にそうですね」
「!」
「それならひと思いに……」


ストーリーメニュー

TOPTOPへ