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カスミ草の花束

第1章 カスミ草の花束

 ハナは僕の腕の中にいた。
 
「大丈夫だった?」
 
 ハナは頬を赤く染めて、小さく頷く。そして、僕の胸に顔を埋めた。僕は、彼女の髪に指を通した。
 
「タロ、〈イノセンス〉の意味って知ってる?」
 
 ハナが熱い呼吸で言った。
 
「うん、……っと、純粋とか……」
 
「やっぱ、タロは純粋だったね。よかった」
 
 と、ハナは僕の目を見て、白い歯を見せた。僕はハナの頭を撫でた。
 
「私、待ってたの。カスミ草を渡した日から、ずっとタロと……」
 
「ハナもね?」
 
「えっ……」
 
「呼んでみただけ……」
 
「何よ。それ?」
  
 僕は知っていた。〈イノセンス〉の意味が純潔という意味もあることを。
 
 
 おわり
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