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人から見れば地獄。ただ僕は幸せだ。

第1章 幼少期

僕が、母親の存在を知ったのは小学4年生の時だ。
小4の夏休みのある日、施設の呼び出し放送が流れた。
「OO君園長室まで来てください。」
そこそこの悪ガキだった僕は呼び出しに慣れていてまた怒られるのかなと内心ビクビクしていた。
園長室に入り、そこにいたのは園長と見知らぬ女性と見知らぬ男性だ。
お腹の膨らみから見て女性は妊婦だとすぐわかった。
園長が言う「こちらがOO君のお母さん、お父さんです。」
はぁ?いやいや僕に親なんていたの?いろんなことが頭をよぎったが言葉は発せなかった。
そんな僕を気にもせず園長が続ける。
「今日から2週間ほど帰省してもらいます。よかったですね。」
いやっ待て待て誰が家に帰りたいと言った?僕は例年通り、みんなでキャンプに行って、施設の前にあるプールに行って、旅行に連れて行ってもらって、僕の夏休みの予定はすでに空きがなくたのしみに埋め尽くされていた。
なにひとつ園長の言うことを理解できない僕は泣くことしかできない。
泣きながら「ここにいたい。」
それが今僕にできる唯一の抵抗だと思いただひたすら泣いた。
泣き止まない僕に園長をはじめ、先生たちが「大丈夫だよ。すぐに会える。」優しい言葉をかけてくれる。
僕は園長の言葉を信じ、見知らぬ両親と共に施設をあとにする。
しかしこの先、園長と会うことも、友達に別れを告げることもできない。
僕はなにも知らないまま家に帰ることになる。

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