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カトレアの咲く季節

第6章 花の舞

「ライ! 手伝ってくれ! ユナが」
 人混みがざらりと二手に割れた。その中央を早足で歩く少年が一人。
「承知しているよ」
 いつもと同じように落ち着き払った声で、ライが応える。

 どうしてここにいるのだろう、という疑問はなぜだか感じなかった。
 他にいくらでも大人はいたはずなのに、ライに頼るのが一番確実なように、その時のアレクは思った。

 光と音の消えたような広場から、アレクとライは、二人がかりでユナを抱えて花屋に帰った。

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