無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

起きると彩からの着信歴があった。マナーモードのままで気がつかなかったようだった。
出勤の準備しているころだろうから電話に出るかもしれない。
予想どおりすぐに電話に出てくれた。

「石井さん！おはようございます。」
「あ、彩？おはよ。お前、何か悩んでる？」

「えっ！突然どうしたんですか？私は大丈夫ですよ。」
「そうだよな。大丈夫だよな。お前、仕事の時ちゃんとしないと。滝田さん心配してたぞ。」

「・・・ごめんなさい。気を付けます。」
「じゃあ、また、店でな。」

「えっ！…あ、お店で…ですね…はい。お仕事頑張ってください。」

彩の様子がおかしいことに何も気がつかなかった。
だってあいつはいつも大丈夫だって言っていたから。
電話の向こうで下唇をかんで我慢していたことも、涙を流していたことも何も気がついていなかった。