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ダブル不倫 〜騙し、騙され

第4章 4

 ちゅっ……。
 
 小鳥が餌を啄むように畠山の唇が触れた。舌の先を出して、彼の唇を待つ。畠山の唇が優子の舌先を啄む。
 
 パタンと冷蔵庫のパッキンが閉じる音がした。
 
 別れを惜しむように二人の唇が離れた。二人は椅子に腰を下ろした。
 
 修一が畠山の前にビールを置いた。
 
「……はい、もっと飲んでくださいね」
 
 ヴーン、ヴヴヴ……。
 
 ダイニングテーブルに置いた修一のスマホが唸りを上げて震えた。優子と畠山が目を見合わせる。
 
「ちょっと、失礼……。まあ、ごゆっくり……」
 
 修一はビールを喉に流し込んだ。ダイニングのドアの外に消える。どこかの部屋のドアの閉まる音がした。優子が修一の行方を目で追う。
 
「行った……」
 
「忙しいんだね。ご主人……」
 
「うん、これでね……」
 
 と優子が小指を立てて見せた。
 
「ふーん……。優しそうに見えるのにね」
 
 優子がテーブル越しに身を乗り出す。畠山の唇を待つ。
 
「気づくかな、奥さんと僕のこと……」
 
 畠山の唇が近づく。
 
「気づかないわ……」
 
「そうなんだ……」
 
「興味ないからね。家族には……」
 
 優子の両方の手が、畠山の頭を引き寄せる。彼の首筋に唇を落として、噛み付くかのようにそこを吸う。

 ちゅっ……。
  
「たっ……」
 
「ふふ、キレイな桜の花びらが……」
 
 優子は畠山の首筋につけた〈桜の花びら〉のプリントに唇を落とした。貪るように畠山と舌を絡める。

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