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廃屋的B少女

第3章 ゲッセマネの園

PM5:00、廃屋の屋上に辿りつく綿毛のように幻を誘う僕らは性愛の追究に耽溺している、チャイナ・ドレスも今、目の前で惰眠を貪っている彼女のブレザーの制服も所詮はいくらでも着せ替えの効く衣装に他ならない。

その素敵な衣装をはぎとって見れば、そこに裸の真実が露呈されるかと云えば、そうではないところに現在と云う名の具体性の底知れない闇の恐ろしさが潜んでいる。

決まって不可視の存在(ゴースト)が隠れてる、その意味を謎として宙に吊り、それに続くだろう彷徨と、回復し難い記憶とが煽る喪失と崩壊の過程は決定されていた。

ユートピア或はパラダイスの地盤はオロナミンCの蓋を空けた時に出る煙りの如く儚く俄に消え失せるほど脆弱で、今にも崩れ落ちそうな廃屋だったのかも知れない。

月が綺麗な狂った夜に僕らの恋は終りを迎える… それはある意味グロテスクで背徳と残虐を見せつける人間の業の探求であると云える、豪奢な生活、悦楽、官能を求め愛し、相手の苦痛の表情に性的興奮を覚える変態たち。

その金色の頭毛を掻き上げて一服したタバコを背後からオレの鼻先に差し出す一連の仕草を自分自身に属さない非人格的な瞳を獲得して世界を思いも由らない相貌の元に捉えた(と云うのだからミステリーかも知れない…)

嵌め殺しの窓枠に座り込む彼女は、カクテルグラスに軽く白い指を添えてぼんやりと戸外の景色を眺めていた。

クリスタルの灰皿に煙草の灰を落とした彼は煙草の火を消し、 タンブラーを掲げて乾杯をする真似をしたが、
373は外を向いたままだった…続く(・。)っ)…

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