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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第7章 記者

「困ります。降りて下さい」

「まあ、そう言わずに、俺の運転でドライブに行こうや」

男は溶けた歯を見せながら、ニンマリと笑う。

夕子は、警察に電話をしようとバッグからスマホを出した。

「おっと、どこにかけるつもり」

「友達呼ぶんなら、今から俺達が友達になったるで」

金髪で耳に数個のピアスを開けた、分厚い革ジャンの男と、スキンヘッドらしい頭に、黒いニット帽を被った、派手なスカジャンを着た男が背後から詰め寄る。

金髪の男は、スマホを持つ夕子の左手首を掴んだ。

「俺達が車で送ってやるからさ、乗りなよ」

「私の車です、勝手なことしないで……離してよ」と夕子は、抵抗するが、もう一人のニット帽の男にも掴まれ身動きが取れない。

運転席に座る薬の売人は、車内を吟味し、

「おっほぉ~、スゲえ車乗ってんなぁ。こいつ高いんだよなぁ。でも、もったいないよなぁ、これが海に沈むなんてなぁ」

そう言って、ダッシュボードの助手席側にあるグローブボックスの中を確かめた。

「やめてください!」と力づくで二人の男を振り切った夕子は、運転席にいる売人の手を止めに、体ごと押し入るが、すぐに二人の男に引き離された。

金髪の男が、夕子の首に後ろから手を回す。

すると、ニット帽の男が、

「おい、なに見てんだてめえっ!」と声を荒げた。

金髪の男は体ごと振り向く。すると、夕子もその状態で体を向けた。

「あっ……」

そこに立っていたのは、お面姿の良夫だった。

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