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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第9章 勝重からのプレゼント

そんなやり取りの後、良夫は、アパートを出る。

今朝は喫茶店でモーニングを楽しもうと思ったが、夕子の電話で時間が狂ってしまった。

「時間はギリギリだな」

模型のチラシを見てダラダラしていたという現実は、彼にとってはすでに失われた過去のことであり、自分でそれを咎めることは決してしない。そもそも、それをしなければ、ゆっくりコーヒーを楽しみながら、ゆとりをもった夕子との漫才が出来ていたことであろう。

良夫は、いつもより一本後の電車に乗ることにし、近所の喫茶店に入ることにした。

『カランコロンカランカランコロン』という長めのベルを鳴らしながら、扉を開けると、フワッと温かいコーヒーの香りが、全身包む。

そして、喫茶店の店長が、渋い声で一言……、

「すいません、まだ準備中なんですよ」

良夫は、去っていった。

しょうがない、駅前のチャラチャラした喫茶店に行こうと、小走りで先を急ぐ。

超季節外れの白い息が、小刻みに吐かれ、極寒の中でもうっすらと汗がにじむ。

明日からゴールデンウイーク……だが、関西の一部では、道が凍結してるところもある。

異常気象が続くと、関西の事業者、農産物の生産者に大きな影響を及ぼし、消費者に不安を残すことになる。

駅前のカフェに入った良夫は、コーヒーのモーニングセットの値段を見る。

「1500円!? マジか……」

コーヒーのみだと、それほどではない。

それに、小さなシフォンケーキなら280円で買える。

「これで我慢するか」

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