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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第10章 山田二郎

目の前には、大きな窓があり、換気のためか、左半分が開いていた。

「寒っ……」

外は真冬の寒さ。換気とはいえ、流れてくる冷気は身を震わせる。

その時だ。

窓の外から、カリカリと音がする。

特に気にはしなかったが、徐々に音が激しくなってくる。

やがて、窓の下あたりから、なにかがチラチラと姿を出す。

「なに?」

それは色鮮やかな物体であり、カリカリという音と共に、まるで浮き沈みするように見える。

良夫は、まさかと思い、手を伸ばしてみた。

それを掴んだ瞬間、良夫はわかった。

「嘘やろ」

窓から引き出したそれは、紛れもなくお面だった。

「えっ、ちょっと……アカンて血圧上がるわ」

後ろから男性が、「なにをしてる?」と声をかけてくる。

「いやいや、なんもないす……」

あまりの驚きに、小便が止まった。良夫ら、あまりの出来事に血尿でも出ていないかと便器を確かめたが、赤い色は見当たらなかった。

良夫はお面を懐に隠すと、残尿感が無いように、チンを振る。

「お待たせしました」と良夫は手を洗ってトイレを出た。

なぜ、お面があんなところにあったのだろうか?

いくら考えても、答えは出ない。

時は、良夫が6時に作業が終わり、会社の風呂に入っている頃に遡る。

良夫のアパートで、いつものように叔母の黄木樹鈴が、良夫の世話をしに合鍵で入っていた。

すると……、

『コンコン』とドアをノックする音が……。

鈴はドアスコープ越しに覗いてみる。

そこには、体格のいい作業服の男性と、高年の女性が立っていた。

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