テキストサイズ

お面ウォーカー(大人ノベル版)

第10章 山田二郎

二郎は、その四人を見るなり、グッと眉間を寄せた。

中年男性は杖の先を二郎に向け、「うちの若い衆が、失礼でもしましたかな? まあまあ妥当な料金やと思いますが、なにか問題でも?」と笑みを浮かべながら言った。

「別に……ちょっと意外だっただけだ」

二郎は杖の先を、手で払い除ける。すると、すぐさま後ろの三人が身を乗り出す。

「落ち着け」と男性は、三人を制止すると、通路を空けるように、壁側に身を避けた。そして軽く会釈すると、

「だったらどうぞ、お帰り下さい。よろしければ、またどうぞ」

「はい、だったら失礼しまーす」と良夫は、四人の前を通ろうするが、二郎は仁王立ちになり、

「あんた、河原組の組長か」と尋ねた。

良夫は振り返り、ビックリしたような顔で、「ちょっとちょっと、帰ろう帰ろう。失礼しました、すいません」と二郎の腕を引く。

だが、良夫程度の男が引っ張っても、二郎は、微動だにしない。

中年男性は、二郎の前に立つ。

「お兄さん、有名な格闘家やそうですな。そんなお方が、わしらみたいなヤクザもんに、なんぞようですかな?」

「あんたが組長さんかと聞いている。質問に答えてよ」

二郎は怯むことなく、男性の前に胸を張って、堂々と目を合わせる。

「お兄さんよ……どう見ても、わしの方が年齢が上やってのがわかりまっしゃろ。まず、目上の人に対する言葉遣いっていうのを知らなあきまへんで。まあ、質問には答えたる。わしが、河原組で三代目組長やってます、田原利彦や。これでええかいな?」

組長の田原は貫禄のある表情を見せ、そう答えた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ