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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第10章 山田二郎

良夫は、組長の反応が意外にも落ち着いていたことに、安堵の表情を浮かべる。

その場の空気感は、まだピリピリしたものが残るが、このままやり過ごせば大事にはならないかもしれない。そう考えた良夫は、組長の田原に頭を下げる。

「あの、組長さん、また店には寄らせていただきます。このお兄さんが、失礼して申し訳ございませんでした」と良夫が言うと、二郎は肩で息をし、田原の後ろにいる三人をザッと見て、

「本間海奈(ほんまうみな)って名前の女を知らないか?」と聞いた。

田原は、小首をかしげる。

「さぁ……そんな名前の女性は、聞いたことがおまへんなぁ。その人を探してはるんやったら、他をあたりなはれ」

二郎は、目を細める。

「おかしいなぁ。あんたの配下にある麻薬組織に絡んでるって話を聞いたんだ。まったく知らないってことないだろう」

「いや、麻薬組織ってのも、なんのことかわかりまへん。兄さん、なんか間違えてはんのとちゃいまっか?」

「いや、その女性の父親が、河原組の東京の姉妹組である宗田組の元幹部だったんだ。俺はちょっとした探偵業もやってて、調べているうちに、ここにたどり着いた。宗田の若い幹部にしっかりと聞いたから、間違いはない。本間海奈について知ってること、あるんじゃないか?」

田原は、後ろの三人に顔を向けるが、三人も知らないと首を振る。

二郎は腑に落ちないといった様子で、組長の田原に詰め寄る。

「だとすれば、宗田の幹部は嘘をついて河原組の麻薬組織に絡んでるって言ったのか? 自分が助かるために、大阪の河原組の名前出すとは、許される行為ではないよな」

「待った……宗田の幹部の者相手に、どうやって話を聞いた?」

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