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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第10章 山田二郎

二郎は右手人差し指で、耳の後ろをかくと、

「まあ、ここでなんだかんだ言ってもラチがあかねぇ。暴れて問題を起こすわけにはいかねぇから、ここで失礼するよ。組長さん、またな」と軽く頭を下げた。

田原は二郎を見据え、

「ああ、そうですか。偉い有名人さんに出会えて光栄でしたわ。まあ、娘さん、見付かるとよろしいですな」

「ふん」と二郎は、鼻で返した。

外で良夫は、上着の内側に引っ掛かっていた物をようやく取れたのか、やや落胆の様子。

「このお面、鬱陶しいわぁ……なんで、どうやってここまできたんや? なんか、どこかにコントロールするようなもんついてんのか?」とお面を手に表裏を確かめる。

すると、後ろから、「行きましょう」と二郎が、背中を叩く。

その反動で手からお面が生き物のように跳ね、顔に貼りついた。

「えっ!」

慌てて引き離そうとするが、すでに遅し。

それを見た二郎は、

「え、田中さん、すごい気合い入ってますやん。そんなヤル気でした?」

「んなわけあるか! あんたがこうやって背中を叩くからや」と良夫が、左手で二郎の背中の左側を叩いた。

ガキーンという強い金属音と共に、左手首に衝撃が走った。

二郎は音に驚き、身をかがめ、良夫は「うわぁっ!」と腰を落とす。

二郎は後ろを向いた。

わずか10メートル先のビルの中から、田原がこちらにピストルを向けて立っているのが見えた。

「マジかよ」と二郎は身構える。

驚いてるのは、田原と若い三人も同じだった。

「た、玉を弾きやがった……」

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