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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第10章 山田二郎

「くだらねぇ屁理屈だ」

「なんなりと言いはったらよろしい。ここは人通りが少ないよって、またこれは音が鳴らしまへん。銃で人が撃たれるなんて、誰も気付きまへんわ」

田原は、ピストルの引き金に指をかけ、

「このままあの世に行くか、土下座して泣いて詫びるか、どちらか選ばせてやろうやないか」と言うと、若い三人が笑みを浮かべる。

二郎は、フンと鼻を鳴らす。

「この場合、どっちを選んでも展開は一つだろが」

「そろそろ、黙れ」

田原は、引き金を引いた。

悲鳴を上げ、後ろに倒れたのは……田原だった。

突然の出来事に、一瞬唖然とした二郎だったが、今がチャンスと田原との距離を縮め、手に持ったピストルを、蹴り飛ばした。

革のコートを脱ぐと、田原の左肩が、みるみる赤く染まるのが見えた。

若い男の一人が、良夫を指差して言った。

「あ、あのお面野郎が、弾き飛ばしやがった」

良夫は音と衝撃を受け、身を縮こませていた。

田原がピストルの引き金に指をかけた時、良夫は、地面に捨てられたチューインガムを踏んでいたことに気付いた。

アスファルトに靴底をこすりつけ、必死にガムを取ろうとしたのち、足がもつれ、バランスを崩し、両手をバタつかせていた。

倒れそうになった時、左手がたまたま二郎の前に出たため、再び手首のブレスレットにピストルの玉が当たった。

その玉は、跳ね返って田原の左肩を貫いたのだ。

田原は左肩を押さえ、「貴様……」と声を枯らす。

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