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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第10章 山田二郎

二郎の額には、滝のような汗が流れ落ちていた。

ピストルを向けられたことによる、緊張と恐怖によるものだった。だが、二郎はそんなことはまったく表情にも見せず、田原に人差し指を向ける。

「その痛みは、俺に与える痛みだったんだろ。自業自得だ、自分が受けてみてどうだ? 勘違いしてそうだから言うが、俺は行方不明の女の安否を知りたいだけだ。麻薬がどうのこうのは関係ないし、警察に言ったってなんの得にも、なりゃしねぇ。だから、その話をあんたの口から聞きたかっただけだ。それに、薬の組織について、さっきあんたは、なんのことかわからねぇみたいなことを言ってただろ」


「ヤクの売買はわしの配下の者がやっとること。やれと言ってさせているわけやない。内容のことは知らん。だが、やつらを守るんは、わしの使命でもあんねや。そやさかい、警察に縄を括らせるわけにはいかん。シラをきったんはそのためや。それに、その女はここにおるわしらには関係ない。指紋一つ触れとりゃせん。調べるんやったら、あんたが勝手に調べたらええ。だが、忘れたらあきまへんで、あんたが相手してるんは、ヤクザや言うことを」

「それを承知で、話を聞きにきたんだ。なら、組長さん、あんたがその配下の連中に女の存在を確かめてもらうってことは出来ないか?」

田原は、苦痛に顔を歪める。

「ヤクザに物を頼むんなら、それなりに代償が必要になってきまっせ……」

「代償……」

二郎は、唇を噛み締めた。

するとビルの中から、数人の男達が飛び出してきた。

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