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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第10章 山田二郎

「おい、あんた、麻薬密売やってんのか?」

「お、おい、いきなりなんなんだてめえ!」

男は二郎の手を払おうとするが、強い力に弾き返される。

「じゃあ、本間海奈って女は知らないか?」

「知るかそんなもん、お前、これはなんのつもりや! サツか!?」

「質問に答えてほしいだけだ」

「なら、この手をはなさんかいっ」

ごもっともである。二郎は周りを意識しながら、舌打ちをしてその手をはなした。

傷を負った田原が額に汗を浮かべ、二郎を杖の先で示すと、黒いスウェットの男に言った。

「この兄ちゃんは、格闘技のチャンピオンや。お前がまともにケンカしたかて勝てる相手やない。もし、さっき聞いた名前の女の存在を知ってたら教えてやれ。誘拐を、しとるんやったらの話やがな」

意外にも、組長の田原が二郎に肩入れをしはじめた。

二郎は、軽く会釈すると、田原は目を閉じる。

「昭和平成と違って、今はわしらのようなヤクザ者はだんだん隅に追いやられてまんねや。露骨に悪い」

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