テキストサイズ

お面ウォーカー(大人ノベル版)

第10章 山田二郎

「申し訳ございませんが、一つお訊ねしてもよろしいでしょうか?」

「口調と行動がバラバラだなお前!!」

「失礼」と二郎は、手をはなすと、改めて胸ぐらを掴みなおし、

「おい、本間海奈って名前の女性を探している。知らないか?」と聞いた。

「よっしゃ、それでええ。で、ほんまうみなって女のことを聞きたいんやな」

「……あ、教えてくれるんすね」

黒いスウェットの男は、首を傾げ、ふんふんとなにかを思い出したかのように頷いた。

「確かに、その女がいたのは知ってる」

「なに?」胸ぐらを掴む手に力が入る。

「だが、その後のことは知らん」

「他に知ってる者は?」

「上にいる、東山野隆樹(ひがしやまのりゅうき)って男が知っている……て、そいつがいま撃たれて大変なんや!」

スウェットの男は、二郎の手を払いのけ、ビルの中に入っていった。

「待て、俺もいく」とその後ろを、二郎は追いかける。

そのやり取りを、黙って見ている田原と三人の若い衆は、良夫の方へと目を向けた。

四人の猛獣に睨まれた、子鹿のような良夫は、お面の下から汗がタラタラと流れ落ちるのを感じた。

「あの……帰っても……いいですか?」と声を裏返しながら、聞いてみる。

若い衆の一人が、上を指差して言った。

「あの格闘家を連れて帰ってくれ」

「……僕、一人でですか?」

「当たり前やないか! お前の連れやろが」

「僕が連れられてきたんで、それはなんとも……」

良夫は物腰を低くして言うと、田原は疼く傷口を手でおさえ、「とにかく連れて帰ってくれ。このご時世、わしらは目立ったことが出来んのや」

鉄砲ぶっ放しといて言うなと、良夫は心の中で呟いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ