
お面ウォーカー(大人ノベル版)
第3章 ケータイ地域ニュース速報。
8時前になると、工場の作業員は本社の裏の中庭に集まり、朝礼と、ラジオ体操を始める。そして、それらが終わると、各自の持ち場に移動し、作業がはじまる。
良夫は、様々な部品の金型の中に、原料となる樹脂を流し入れ、プレス機で加熱・圧縮・成形を行い、出来上がった品を取り出すといった作業をしている。
だが良夫は、その部品が何に使われているのか、まったく知らない。いや、知らされてはいるだろうが、そんなことはどうでもいいと思っていた。
良夫が作業をしている途中、別のプレス機の作業をしていた長谷川が、良夫に声をかける。
「おい、新婚課長さんがおいでなすったぜ」
良夫は無言で、長谷川が指差す方向を見た。
手に書類ケースを抱えた、上だけ作業着姿の勝重がいた。
良夫はムッとした表情で、作業を続けた。
「なぁ、田中さんよ、あんた勝重さんに祝儀いくら包んだ?」
長谷川は、右手人差し指と親指を小銭に見立てて示す。
「はぁ? いきなりなにを聞くんよ……」
「俺、三万包んだんだけどよ、そのお返しかなんか知らねぇけど、新婚旅行の土産が、なんかわかんねぇ魚のキーホルダーだったんよ。ぜんぜん嬉しくねぇし」
「それはお返しじゃないと思うで。ただの土産やろ……てか、三万も渡したのか!?」
「おうよ、一応は俺達の後輩だしよ。まあ、出世してから、上から目線でモノを言うのが気に入らねぇけどな」
「ふ~ん」
良夫は、1円も出してはいなかった。
良夫は、様々な部品の金型の中に、原料となる樹脂を流し入れ、プレス機で加熱・圧縮・成形を行い、出来上がった品を取り出すといった作業をしている。
だが良夫は、その部品が何に使われているのか、まったく知らない。いや、知らされてはいるだろうが、そんなことはどうでもいいと思っていた。
良夫が作業をしている途中、別のプレス機の作業をしていた長谷川が、良夫に声をかける。
「おい、新婚課長さんがおいでなすったぜ」
良夫は無言で、長谷川が指差す方向を見た。
手に書類ケースを抱えた、上だけ作業着姿の勝重がいた。
良夫はムッとした表情で、作業を続けた。
「なぁ、田中さんよ、あんた勝重さんに祝儀いくら包んだ?」
長谷川は、右手人差し指と親指を小銭に見立てて示す。
「はぁ? いきなりなにを聞くんよ……」
「俺、三万包んだんだけどよ、そのお返しかなんか知らねぇけど、新婚旅行の土産が、なんかわかんねぇ魚のキーホルダーだったんよ。ぜんぜん嬉しくねぇし」
「それはお返しじゃないと思うで。ただの土産やろ……てか、三万も渡したのか!?」
「おうよ、一応は俺達の後輩だしよ。まあ、出世してから、上から目線でモノを言うのが気に入らねぇけどな」
「ふ~ん」
良夫は、1円も出してはいなかった。
