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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第3章 ケータイ地域ニュース速報。

同僚の土産が、キーホルダーで自分の土産が、曰わく付きかもしれないお面。

これは、祝儀を出していない自分に対して、勝重からの嫌がらせなのか?

その勝重が、こちらに向かってくる。

いい機会だし、お面のことで、文句の一言でも言ってやろうかと大きく息を吸った。

勝重は書類ケースから、図面が描かれた用紙を一枚出してこちらにきた。

「田中くん、いつもご苦労さまです」

勝重がきた。思いっ切り正面から、ふざけるなと怒鳴ってやろうか。

「田中くん、これなんだけど、昼過ぎに金型がくるから、これを先に目を通してもらって、いくつか試してもらいたいんだ。これは、田中くんしか頼めないから、ぜひ受けてもらいたい」

「はぁ、これね。はいはい、わかりました」

普通に受けてしまった。

自分にしか頼めない仕事だと言われたら、怒鳴る気力も薄くなる。

だが、なにか一言叩きつけたい。

勝重が、「じゃ、よろしくお願いします」と言って頭を下げた時、良夫はすかさず、

「あの、昨日のお面のことだけど……」と切り出した。

勝重は笑顔を見せ、「あぁ、田中くんにはいろいろお世話になってるから、みんなのお土産より大きなものにしたんだ。現地でのお土産って、あんなのしかなかったもので……」

「いや、でもね、自分は祝儀もなにも渡してないんだよ?」

「祝儀は上司以外は誰一人からも、もらってないよ」

良夫は離れた場所にいる、長谷川をにらみ付けた。

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