テキストサイズ

お面ウォーカー(大人ノベル版)

第6章 ヒーローがいるなら、これもいる。

それは、三島くんがラジオのコードと間違えてさしたものだった。

「え、じゃあ、ラジオはなんで鳴るの?」

見ると、ラジオには、乾電池が入っていた。

「えっ……てことは」

知らず知らずに、メンドウジャは充電されていたことになる。

「うわ、ヤバい、電源を切らなければ」と三島くんが手を伸ばした瞬間、小さな子供を追いかける女性が「待ちなさい、はじめ」と声を出す。メンドウジャはゴトゴトと音をたて走り出した。伸びたコードはコンセントから抜け、シュルシュルと、本体の中に引き込まれていく。おそらく、三島くんがさした時、少しコードが伸びていたのだろう。

「ええぇーーっ! ちょっと、なんで!?」

フリーマーケットの会場はパニックとなるが、メンドウジャは誰にも当たらず、障害物を上手く避けて走り、そのまま会場を出ていってしまった。

「どうしたんじゃ!?」

漠間が、ハンドタオルで手を拭きながら戻ってきた。

三島くんは、「申し訳ありません、私が間違えてコンセントをさしまして、ロボットに充電されてしまいました」と理由をいい、土下座をして謝罪した。

「頭を上げなさい。なぜ、勝手に走り出したのだ? 命令無しでは勝手に……まさか……」

漠間は瞬時に、可能性に辿り着いた。

元は、ロボット掃除機のAIに、さらに容量と剣道の知識を足したもの。

「まだ、ロボット掃除機の記憶が残ったままなのじゃ……だから、誰にもどこにも当たることなく自由に動き出した……しかし、剣道の知識が新たに加えられておる……棒を持った相手を見付けてしまえば、勝手に試合をはじめてしまいおる」

「博士、どうすれば……」

「追いかけて電源を切るか、やめいって声をかけるしかない」

「私が追いかけて、止めてきます。博士は、店を」

そう言って、三島くんは走り出した。

「わかった。頼んだぞ! あ、大騒ぎして申し訳ございませんでした。こちらのテレビはお買い得ですぞ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ