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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第6章 ヒーローがいるなら、これもいる。

メンドウジャは、住宅街に出た。歩道を走る剣道の防具をつけたロボットに、通りすぎる人は、驚きながら道を開ける。

三島くんは、息を切らしながら追いかけるも、その姿を見失ってしまった。

「どこに行った?」

メンドウジャは、手に竹刀を持っている。人に危害を加えるようなことが、無ければいいがと、不安が過る。

メンドウジャは、障害物にはぶつからず、スムーズに走っていく。

そこに、家の前を掃除する、赤いカーディガンを着た若い主婦の姿があった。しかも、手にはほうきを持っている。

メンドウジャは、主婦に近付く。

「えっ!?」

主婦はメンドウジャに気付くが、目の前のその物体がなんなのか、すぐに理解は出来ない。だが、手に竹刀を持っていることから、徐々に戦慄を覚える。

メンドウジャは、主婦が悲鳴を上げる前に、その竹刀で、主婦が持つほうきをビシッと弾いた。

ほうきは主婦の手から離れ、約3メートル先に落ちた。主婦はおののき、悲鳴を上げるのを忘れて、へたり込む。

それ以上のことはなにもせず、メンドウジャは、走り去った。

「やだやだ……なになに……」

主婦は目に涙を浮かべながら、四つん這いでほうきを拾うと、ゆっくりと立ち上がろうとする。

そこに、三島くんが走りよってきた。

「あ、大丈夫ですか?」

主婦は震えながら指を立て、メンドウジャが向かった方向に指をさした。

三島くんは、「あの方向になにかあったんですか?」

「怖い……ロボットが……」

「ロボット? それって、剣道の防具をつけたやつっすか?」と聞くと、主婦は頷いた。そして、なにがあったかを、三島くんに話した。

「すいません、あなたが見たのは、剣道練習用ロボットなんです。勝手に逃げてしまいまして……ご迷惑をかけて申し訳ありません。あの、あれを止めましたら後ほどお詫びに来ます」

そう言うと、三島くんは「メンドウジャーっ!」と叫んで走っていった。

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