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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第6章 ヒーローがいるなら、これもいる。

骨董品屋の店主の手にある幟が、また弾かれた。

その拍子に、持っていた紙袋までも手放してしまった。

紙袋は、テレビ画面を見ている良夫の足下に落ちた。

「ん?」

良夫は紙袋を拾うと、中を確かめる。

出て来たのは、お面だった。だがそれは、表面ではなく、裏向きだった。

無言で驚いた良夫の耳に、「やめいっ!」という声が届いた。

見ると、驚いた顔で腰を抜かす見たことある親父と、剣道の防具をつけた化け物がいた。その後ろに、ヘロヘロになって近付いてくる三島くんの姿があった。

「なんだあれ? それに、あの人、うちのアパートの人やんか」

良夫は、三島くんを知っていた。ただ、名前は知らない。

メンドウジャの、動きは止まっている。三島くんは、その隙にと背後に近付く。

その頃、競馬を映し出しているテレビ画面には、あるハプニングが流れていた。それは、1頭の馬がなかなかゲートに入ろうとせず、レースのはじまりが遅れていた。

それに痺れを切らしてか、一人の男性が、

「おい! なんやねんなぁ、早うはじめ!」と体を大きく動かして怒鳴っていた。

その声に反応し、メンドウジャが再び動き出した。

メンドウジャのカメラレンズが捉えたもの……それは、手にお面と丸めて棒状にした競馬新聞を持った良夫だった。

「やめいっ!」という声で動きを止めるメンドウジャだが、逆に「はじめ!」の声を聞くと、動き出す。

メンドウジャが構える竹刀の先には、良夫がいる。良夫は、なんとなく危険を感じた。

テレビ画面には、やっと出走した馬が映し出され、同じように良夫も後ろを向いて出走した。

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