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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第7章 記者

「それでやってけてんだ。てか、ここで働いてるの、どうやって調べた?」

良夫が住んでいる場所は、顔が見えた窓の位置から探ることが出来るが、職場の工場や電話番号までどこで調べてきたのか?

夕子は、コーヒーを飲み干し、空き缶を回収ボックスに入れた。

「ここでは寒いので、場所を変えません?」

良夫は無言で頷くと、続けてコーヒーを飲み干した。

「ほんなら、知ってる居酒屋があるから、そこに行こか」

「いいですね。ここから近いんですか?」

「平野駅から近いよ」

「なら、私の車で行きましょう。待ってて下さい」

そう言って、夕子は少し離れた場所にあるコインパーキングに向かい、預けていた普通乗用車に乗って、良夫の前に、戻ってきた。

「すげえ、TAYOTOの新車やん」と良夫は、目を丸くする。

「隣、乗って下さい」

良夫は言われるまま、「お邪魔します」と車に乗り込んだ。

「平野駅近くのパーキングに止めますから、そこから教えて下さい」

「あ……おぅ」

中は心地よい花の香りが漂い、真横に女性がいることでさらに緊張が高まる。

車は走り出す。

すぐに赤信号で止まると、良夫は、大きく息を吸った。

「あんた、お礼をいいたいだけじゃなさそうやね。 てか、さっきの話、どうやって会社のこと調べたの?」

夕子は、チラリと良夫に目を向ける。

「田中さんが、お面をつけて変質者と闘ったことありましたよね」

「ないよ」

「え? 〇〇町の車道脇の細い道で、コートを着た男と」

「あいつか」

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