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不埒に淫らで背徳な恋

第1章 【心の歪み、気付いてる?】





泣いてるのモロバレでそっとハンカチを渡してくる。




「さっきの会話も…実は聞こえててなかなか戻れずに居ました」




「そうなんだ……これはちょっと嬉し涙だから」





顔を見られたくないから俯いたのに左手を取られて嫌でも視線を合わせちゃう。




「コレ……本物だったんですね?」




「え…?」




「僕は単なる恋人からだと思ってました……でもそうじゃなくて、結婚してたんですね?」




急にどうしたの…?
射抜くような瞳。
一瞬、動けなかった。




「あ、そっか……言ってなかったよね?私、結婚してるんだ」




照れ隠しで言ったけど、
そもそも言う必要あるのか?
会社の上司と部下でわざわざ言わなくても興味すらないだろうと思ってた。




「じゃあ、もっと早くチーフに出逢ってたかったです」




ごめん、ちょっと目が潤んでるから直視出来ないけど唐突過ぎて何言ってるかわかんない。




これは、聞かなかったことにするべき?
それとも笑い話で終わらせちゃう?




「佐野くん…?どうしたの?」




手……離してくれない。
ここはどう出る?畠中瑠香…!
しっかりしろ…!




涙を拭いて顔を上げる。
自分から手を解いた。




「僕は……どうすればいいですか?」




「え…!?」




資料室で作業していたからか、Yシャツにネクタイ、腕まくりした袖。
細身なのに血管浮き上がってる。
腕取られた時に見えちゃった。




「畠中チーフのこと……気になって仕方ないです」




「は……?」




え、聞き違いだよね?
ボソッと呟いた
“旦那さんが羨ましい”も聞こえてしまった。




帰国子女だっけ?
中学生までニューヨークに居たとか言ってたな。
にしてもストレート過ぎやしない?
生粋の日本人はびっくりだわ。




「すみません、変なこと言って……」




「ううん……」




距離感がいまいち掴めない。
真っすぐ過ぎて近寄りがたいけど
真っすぐ過ぎるから目を引いてしまう。




「でも僕…っ!」




ほら、簡単に両手握られちゃったよ?
拒む隙すら与えてもらえない。







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