不埒に淫らで背徳な恋
第5章 【贖罪することが救いなのでしょうか?】
小1時間かけて掃除した後。
(今夜、話し合おう)とメールした。
大丈夫、あの時より冷静になれてるはず。
すぐに電話をかけてくる稜ちゃんは冷静になれてはいないみたいだね。
うん……うん……って返事しか出来ない会話。
あと、もうちょっとマトモなもの食べなよ。
全部コンビニ弁当じゃん……作れるくせに。
よく遅く帰った日は一緒に作ったりしてた。
笑い声が溢れてたキッチンも今じゃ空気が冷たい。
二人で掛けてたソファー。
お風呂あがりに髪を乾かし合ったり、テレビを見ながら過ごした。
全部が全部……悪い思い出じゃない。
良い時もあった。
本当に好きだった。
心地良かった。
二人の未来に別れがあるなんて微塵も思わなかったよ……あの日までは。
もう戻れなくなっちゃったね。
一緒には居られなくなった。
勝手でごめんなさい。
稜ちゃんの未来を与えてあげれなくて本当に申し訳なく思ってる。
このテーブルで書くとは思わなかった。
捺印して広げたまま家を出る。
女は切り替えが早いとも言われてる。
割り切ったら即行動だって。
薄情だと言われても仕方ない。
自分でも驚くほどに未練がないの。
ドアを施錠しようとした瞬間。
「瑠香さん!?」
エレベーターから降りてきたのは紛れもなくお義母さんだった。
戻って来てくれたの?ってやっぱ筒抜けじゃん。
「掃除してくれって言われて来たんだけど」
「はぁ、そうですか。ご迷惑おかけしてすみません」
それより合鍵渡してるところが気になってしょうがないんだけど。
「それより戻って来てくれたのよね?」
「お義母さん、声が大きいです…」
ご近所に聞かれちゃうじゃない……勘弁してよ。
部屋に入ろうとするのを必死に止める。
置き去りにしたもの見られたら発狂するに違いない。
「あの、掃除はもうしましたので…!今夜帰ってから稜士さんとは話し合うつもりです」
「話し合うって何を?まさか…」
「場所変えません!?」
少しくらいならまだ時間はある。
駅前の喫茶店に入り落ち着かせるつもりがまた逆鱗に触れてしまうなんて。
嗚呼、本当ツイてない。