テキストサイズ

不埒に淫らで背徳な恋

第5章 【贖罪することが救いなのでしょうか?】





「あれからやっぱり気になって稜士には言ったの。検査を受けなさいって。本当は問題を抱えてるのは稜士の方なんじゃないかって」




よく飽きもしないでこの話出来るよね。
もう私の前では控えるんじゃなかった?




「精子検査ですか?その必要はありません」




私も腹を括っていいよね…?
これ以上長引かせたくない。
口もつけないで帰るつもりの珈琲が運ばれてきた。




「すみません……もう限界なんです。解放……してくれませんか?」




お義母さんの顔色が変わったのを見逃さなかった。
そういうところ、益々似てる。
あの時の稜ちゃんと同じ目をしてる。




「解放って……私と稜士が何をしたって言うの?どれも全部夫婦には必要なことでしょ?」




「前にも言いましたよね?それが夫婦を引き裂くことにもなるって。私は忠告のつもりだったんですが?」




「子づくりを強要したとでも言うのね?出過ぎた真似だったかも知れないけど早く孫の顔を見たいと思うのは自然なことだわ……」




「可愛げのない嫁ですみませんでした……苦しいのは稜士さんの方ですよね。私が縛りつけてはいけないと思います」




「それが離婚理由なの?そんなの認められるわけないじゃない」




「協議離婚なら大丈夫ですよね」




「あの子絶対に認めないわよ?あなたを愛してるんだから」




「一生、子供を授からなくても…ですか?」




「え?もしや瑠香さん……この先も生まないつもりなの?」




「はい、ですから私じゃ稜士さんを幸せには出来ないんです。私も一緒に居て辛いだけなので……もう修復は不可能かと」




終わりだと思えば淡々と話せてる。
感情を押し殺して見つめる先では何か吠えている気がするけど。
嗚呼、そうか。
空気が凍りついたように思うのは水をかけられたからか。




怒りに任せて「冗談じゃないわ」と叫ばれる店内。
顎から滴り落ちる水滴。
おしぼりで拭い席を立つ。




「これで会うのは最後です……本当に今までお世話になりました」




目立とうが関係ない。
深く頭を下げ伝票を取り立ち去った。








ストーリーメニュー

TOPTOPへ