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不埒に淫らで背徳な恋

第5章 【贖罪することが救いなのでしょうか?】





「私……ちょっとお願いがあるんだけど」










紙切れ一枚で全て終われるわけじゃない気がしてる。
だってほら、もう駅まで迎えに来てる。
改札口まで駆け寄って来る姿に恐怖さえ感じた。




少しやつれた顔。
無精髭も……その顔で仕事して来たの?




「部屋、片付けてくれたんだね?ごめんね、散らかしちゃってて」




えっ…!?一度帰ってるの!?
じゃあ見たよね?テーブルの上に置いてきたもん。




「帰ろう」と手を握られ思わず拒む。




え、どういう神経してるの!?
帰ろうって何?
受け入れないってことで理解していいのね?




「瑠香…?ちゃんと家に帰ってから話し合うんでしょ?」




「見たんだよね…?それを踏まえての話し合いでいい?」




「ん?何の話?見たって何を?」




これは……わざととぼけてる!?
それとも本当に見ていない!?
もしかしたらあの後お義母さんが家に戻って処分したのかも。
もしそうだとしたら……本気で軽蔑してしまう。




とりあえず外で話すことじゃないし家に帰ろう。
微妙に距離があるまま歩き出す二人。
もうすでに息が詰まる。




会社を出た時に外した指輪。
今日ちゃんと返せるだろうか。
受け入れてもらえなくても置いていこうと思う。




こうして並んで歩くことも最後かも知れない。
静かなロビーを進み、静かにドアが開く。




どうか冷静に……まずは話し合いを。







閉め切った空間に二人。
テーブルの上には書類などなかった。
やっぱり処分されたか。
こんなこともあろうかといくつか用意している。




「稜ちゃん」




重い空気の中、意を決して呼んだら
「お腹空いてるだろ?」とキッチンへ逃げる。




「食欲ないから何もいらない……それより話聞いて?」




「だったら珈琲入れるよ」




ケトルにお水を入れてセットする。
仕方なく椅子に座った。
待ってる時間が落ち着かない。




「あの、稜ちゃん」




「あのさ…!やっぱり何か作ってくれない?瑠香のご飯が食べたい」




「え…?今から…!?」




「簡単なものでいいから…お願い」









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