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不埒に淫らで背徳な恋

第5章 【贖罪することが救いなのでしょうか?】





ろくなもの食べてなかったんだ…って言われてもそれどころじゃないのに。
ただの時間稼ぎだってわかってる。
冷蔵庫を見ながらナポリタンにしようと野菜を切っていく。




「瑠香のご飯…久しぶりだな」




背後に居るのがわかり振り返る。




「座ってて」




「前まではそんなこと言わなかったのに…」




近付く距離に拒否反応する身体。




「来ないで…!」




前科があるの……ちっとも気が抜けない。
私が今、どんな目で見てるかわかってるの…?




「わかった……待ってるよ」




手早く作って出すと頬張りついた。
手が止まるから前を見たら肩を震わせ今度は泣いている。




「やっぱり美味しい……瑠香のご飯」




フォークの音と嗚咽が鳴るリビング。
そっとティッシュケースを差し出す。
拭っても拭っても溢れてる。
泣き落としとかズルい。
手元に握る携帯。
音無しでかかってきたのを通話状態にする。




「帰って来いよ……瑠香、頼むよ」




頼む…って消え入りそうな声。
初めてこんなに泣く姿を見た。
だからってどうもしない。
多少驚きはあるけど気持ちが揺らぐなんてことは決してない。




「ごめんなさい」




謝って済む問題でもないのは重々承知。
私こそズルい。
自分の不貞行為は伏せて、ただただ離婚を迫っているのだから。
子づくりに同意出来ない、気持ちが離れた……だけの理由で。




稜ちゃんさえ納得してくれれば協議離婚出来る。
このまま夫婦生活続けてもお互いにメリットはないでしょ?
心が破壊していくだけ。
そんなの耐えられない。




初めてなのか、二度目なのかはわからないけど再びテーブルの上に置いた離婚届。
サインも判も押している。




目に入った瞬間破り捨てられた。




また書かなきゃ…って思ってる。




「もう……稜ちゃんとは一緒に居られない」




「子どもは諦める…!」





「そういう問題じゃないの」




「そういう問題だろ…!じゃあ何だよ?男か?男が出来たのかよ!」




「稜ちゃんと居ると息が詰まる……怖い」




「怖いって何がだよ…!」









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