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不埒に淫らで背徳な恋

第6章 【守るべきものがある人生は幸福ですか?】





ネクタイを緩め腕まくりする佐野くん。
モヤモヤしてたらこういうところでストレス発散するんでしょ?私からそう教わったと言われたら返す言葉もない。
これはやむなく付き合うしかないだろう。




「言っときますけど手加減しませんからね?1回勝負です」




良い感じに酔ってるのに今から汗かかすんだ?
トロンとした目で見上げてる。
油断した隙きに頬に触れられて瞳が揺れた。
一瞬にして戻ってしまう空気からとっさに目を逸らす。




「僕がホームラン取れたらもうひとつだけ我儘聞いてください」




「私がホームラン取ったら…?」




少し詰まらせた後、覚悟を決めたように「ちゃんとチーフのこと諦めます」と言った。
もうひとつの我儘が何なのか恐らく検討はつく。




だけど言わせてはダメ………




「酔ってるからフェアじゃないわ」




「酔ってなくても実力の差はあったんでどっちにしろフェアじゃないです」




「そんなことで決めてしまうの?」




ヤバ……何言ってるんだろう。




「悔しい、ですか?でも絶対に僕が取るんで」




そう言ってバッターボックスに入って行ったけど、結構飲んでいた私たち。
足元もフラついて100キロが打てない。
腰の重心もブレて呆気なく2、3球無駄にしちゃってる。
これ、私勝っちゃうかもよ?
いや、勝って現実叩きつけてあげなきゃ。




「あー!クソっ!」




あと5球。
ホームランどころかヒットすらまともにない。
もうこのまま終わるんだね…と思ってた。




「俺はやっぱり瑠香さんが好きだー!」





大声で叫びながらめちゃくちゃに振ったバットの先端に当たってヒット。




え……!?ウソ……!?
ていうか叫ぶのやめてよ。
めっちゃ見られてる。
そんなのお構いなしな佐野くんは調子が出てきたとばかりに腰を低くし構えてる。




「諦められるかー!」





叫ぶとヒットするって何なのよ。
しかも徐々に上に上がってる。




「絶対に諦めない!」




「好きだー!」




お願い……もう充分だから。
全部ヒットしてる。
最後の1球。








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