不埒に淫らで背徳な恋
第6章 【守るべきものがある人生は幸福ですか?】
目つきが変わって顔が近付いてきた。
ヤバい……やられる……!!
咄嗟に顔を背けて阻止する。
「やめなさい」と声色を変えたら我に返ったのかすぐに離れてくれた。
「ご、ごめんなさい……調子に乗りすぎました」
素直な田中くんにはこれが一番効果有り。
すみません…と何度も頭を下げてる。
怒ってないよ…と言いつつも頬を抓った。
「でももう二度としちゃダメだよ?」
「はい……」
「だってキミは私の可愛いワンちゃんでしょ?癒やされてるの私の方だから……なんちゃってね」
すぐシュン…としちゃうからこんな感じで緩く終わっちゃう。
笑顔で終われたら全て良し、な考えだから、私。
そこがまた期待持たせちゃうところだって叱られちゃうかな?
「皆、可愛くて仕方ないの。だから独り立ちするまではつい気にかけちゃう……誤解させたならごめんね?」
「はい……じゃあ独り立ちしたらもう撫でてもらえたりはナシですか?」
して欲しいのかよ…!
「いや、そこは同士になって讃え合っていく仲になるんじゃない?なってもらわなきゃ困る」
「そうなれるよう頑張ります……」
渋々OK…?
先輩なのは変わらないから指導は続けるけど、範疇越えないように気を付けなければ。
「え、部長……もう一度言ってもらっていいですか?」
「うん、だから新人研修しに行って来て?講師として、本社にレッツゴー!」
「はい!?」
「だからね、社長も新人が育つのは東京支社ばかりじゃないかって。なんてったってうちには教育熱心な佐久間が居るからな!ガハハ!」
「ちょ、ちょっと待ってください」
「現に今も新人社員上手い具合に育ってるじゃない、そのテクニックを本社でもって直々にな」
「私、そんな器じゃないです……」
「充分その位置に立てる人材だよ、自信持て」
でも本社といえば………
「佐野も頑張ってるみたいだし、その佐野を育てたのは誰だ?お前だろ?今じゃ海外飛び回ってるぞ?」
だったら会うことはないのかな…?
それだと好都合だけど。
まだ面と向かって会う勇気がない。
あんなこと言っておきながら普通に振る舞えない自分が目に浮かぶ。