不埒に淫らで背徳な恋
第6章 【守るべきものがある人生は幸福ですか?】
定期的に本社に出向き新人教育を…とのこと。
講師だなんて恐れ多いけど、教えるのは好きな方。
断る理由は、ない。
私以外に講師として年間成績上位のメンバー3人招集されてるみたい。
「で、なんだが……もう佐久間で出していいか?書類」
「え?あ、はい……大丈夫です」
離婚してから福岡出張には行ってないし身内にしか打ち明けてなかったからずっと部長には迷惑と心配をかけてきた。
大丈夫と言った私に優しく微笑んでくださる。
つくづく私は人に恵まれていると思う。
私自身も育てられてきた。
次は私から発信……か。
すぐに招集メンバーとオンラインで打ち合わせに入り、人材育成プロジェクトが立ち上がった。
週1〜2回で3ヶ月ほどかけて打ち合わせをし、当日集まったのは入社して1年未満から2年以内の社員を対象に講習会を開く。
招集メンバーは私が一番年下だから率先して動かなきゃ。
でも本社をいざ目の前にするとどうしても足が竦んでしまう。
どうか、どうか居ませんように…!
鉢合わせだけは避けたい。
担当者さんに連れられて会場となる会議室へ足を運ぶ。
途中、出張等で顔見知りな社員さんに何度か声をかけられるもドキドキハラハラ。
だって名札見て「アレ?」って言われるんだもん。
小さな声で説明したら大概納得してもらえるけどあまり口外しないでくださいね?と心の中で祈る。
もう時効かなとは思うけど、まだ彼の耳には入って欲しくないというか。
知らせる必要もないというか。
そっとしておいて欲しい問題とでもいうか。
えぇ、そうですよ。
三十路手前でバツイチなんです、私。
開き直るが勝ち……なのかな。
会場のセッティングをして資料をテーブルの上にセットする。
それぞれ大阪、名古屋、東京からの招集メンバー。
全員女性という逞しさ。
これからは女性の時代だよね。
会場が満席になったところでスタート。
一応司会…的なこともやっちゃうわけですよ、私。
ザワつく空気が一気に静まった。