不埒に淫らで背徳な恋
第7章 【愛欲に溺れるのは不修多羅ですか?】
「あ、終電あるんで僕そろそろ帰ります」と立ち上がったのは月島くん。
同期の近藤くんと家も近いことから一緒に連れて帰ると支度をする。
月島くんはあまり飲めないみたいだから全然シラフっぽい。
「いいよ、置いといて」と片付けようとしてくれた手を止めた。
「すみません、お先に帰ります」
「気をつけてね」
玄関まで見送るけど近藤くんが結構酔ってて上手く靴が履けない。
二人で笑いながら履かせた。
再び首に腕を回して支えながら立たせ礼を言ってきた。
「あ……」とこっちを振り返るから忘れ物かな?と目を丸める。
「僕へのご褒美はないんですか?」
「え…?」
「いや、次…一人で契約取ったらご褒美ください」
まだ覚えてたんだ……
休日デートは断ったつもりだけど。
「何すれば良いの?出来ないことはしないからね?」
「はい……考えておきます」
私はいつまで部下からのご褒美システムやってんだ…?
そんなに姐御肌なの…?
まぁ、いいや。
「うーん」と唸る近藤くんを支えきれずに玄関で座り込んでしまう。
咄嗟に一緒に支えようと手を伸ばすも私一人の力じゃどうしようもない。
その場でしゃがんだ為、急に月島くんと顔が近くになった。
無言で目が合う。
すぐに近藤くんに視線を移して様子を伺っていたら月島くんの手が私の手首を掴んだ。
再び見つめ合う形に。
「例えばそのご褒美が……これじゃダメですか?」
そう言って近付いて来た。
シューズボックスにもたれるよう座り込む私に綺麗な顔が目の前まで来て前髪が今にも触れそうな距離。
間一髪で唇を掌で覆った。
そのままフリーズして見つめ合う。
月島くんの方から離れてくれた。
「すみません、でも僕は酔ってないですから……嫌な想いさせたなら謝ります、ごめんなさい」
び、びっくりした………!
何なの?今の若い子は。
ここで動揺してたらつけ込まれる。
でも照れは隠しきれない。
「ったく、年上からかわないでよね」と腕を軽く叩いてしまった。
ヤバ……リアクションが古い。
久しぶり過ぎてテンパってる。