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不埒に淫らで背徳な恋

第1章 【心の歪み、気付いてる?】





でもそれが歩み寄りだって思ってんでしょ?
稜ちゃんなりに仲直りしようとしてくれてるのは肌で感じてる。
素直になれないの……もう少し時間が欲しいのにそうさせてくれないのは昔からだよね。




少々強引なところとか好きだったけど……
たまに噛み合ってないの、気付いてる?




「わかった、連絡するね」




本音を押し殺して良い子ぶる私も変われないな……
喧嘩とか面倒だからっていつから思うようになったんだろう。
どちらかが折れれば丸く収まる。
また今回も私か。




「仕事で遅くなっても気にしなくていいから。ただ俺が一緒に帰りたいだけだから」




「うん……行ってらっしゃい」




その気持ちの押し付けからたまらなく逃げ出したくなる時がある。
私はいつまで笑顔で居れるのかな。




卒なく仕事はこなすけれど、合間合間にこぼれる溜め息。




何度か名前を呼ばれてハッとすることもあった。
こんなことで作業を滞らせてはダメだ。
どうしよう、イライラが止まらない。
自分が嫌になる。




部下のミスも変更だらけの予定もいつも笑顔で乗り越えてきた。
でも今日はもう無理。
いくら追い払っても頭から離れない。




私は欠陥品なんだ………






「大丈夫ですか?」




背後から声がかかる。
予定表を書き込む黒板の前でペンを持ったままフリーズしちゃってた。
今から佐野くん連れて取引先と打ち合わせなのに。





「うん、大丈夫。行こっか」




会社の車で移動する。
運転は私、助手席に佐野くん。
いつもなら他愛もない話を交わすのに今日は皆無。
そっとしておいてくれる心地良さに甘えて現場に辿り着く。




滞りなく打ち合わせは終わった。
いや、何なら予定より早く終わらせた。




でもそれは稜ちゃんに会うためじゃない。
現場に着いて車から降りる際。




「僕はまだ仕事では頼りないですけど畠中チーフを楽しませることだけは自信あるんでいつでも頼ってください」




佐野くんがそう言ってくれた言葉に心がザワついたからだ。





「予定より早く終わりましたね」




いつもなら車内で報告メールを打つところだけど。
携帯を閉じた私にキョトンとした顔。
エンジンをかけた後少し窓を開けながら。








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