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不埒に淫らで背徳な恋

第1章 【心の歪み、気付いてる?】





「予定より早く終わりましたね」




いつもなら車内で報告メールを打つところだけど。
携帯を閉じた私にキョトンとした顔。
エンジンをかけた後少し窓を開けながら。




「佐野くん、この後ちょっと付き合って」




「えっ?あ、はい…!どこへでも!」





想定内の反応だったから幾分心が晴れた。
まさか自分でもこんなことするなんて驚いている。




昔からプライベートは明かさない主義だったしオンオフの切り替えも完璧にこなしていたつもり。
だけどここにきて、無性に打ちたい気分。




隣に居るのが彼だからかどうかはまだはっきりわからない。
付き合って欲しいなんて何年ぶりに口にしただろう。




どこに行くかもわからない状況なのに全力で信じてくれている眼差し。
彼が笑ったり傍に居るだけで不思議なほど心が澄み渡っていく。
空気がガラッと変わる……変えてくれる。




「えっ……?ここってまさか……」




キョロキョロしながら状況整理している模様。
良いリアクションで笑ってしまうよ。




「そ、びっくりした?たまに気分転換でこっそり来るんだ」




「バッティングセンター!!」




意外かな?
実は私のストレス解消法はコレ…なのです。
引かれるかと思いきや、ガンガン打ちまくる私を「格好良い!」と言ってくれる。
パンツスタイルにして良かった。




「いきなり100キロっすか?」




「100キロ以下は打たない主義」




プハっと笑顔がこぼれる。
それを横目にバットを構える。
飛んできたボールから目をそらさないで確実に当てにいく。
ヒットまではいかないけど良い当たり。




「神スイングだ…!」




誰かを連れて来たのは初めて。
こんな自分をさらけ出すのは少し抵抗があった。
でもいいか、新人くんだし。
これも私の一部なんだし。




最後の一球、狙った通りのヒット。
手を叩き合って喜んだ。
何もかも忘れられた瞬間。




「やっと笑いましたね?」




今度は自分もやると言って腕まくりする彼。




「笑ってるチーフはやっぱり良いです」








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