不埒に淫らで背徳な恋
第8章 【本能のまま乱れ咲くのは愛と呼べるでしょうか?】
「すぐ忘れるのは無理だと思うんですけど……どうか、幸せに。いや、幸せになってもらわないと諦めつきません」
カシャカシャとキーを打つ手が一瞬止まってまた動き出す。
「そうね、もしそんな時が来たら……頑張って勇気出して素直になってみるわ」
「素直になれない相手だったんですか?」
「ううん、むしろ逆……相手が素直過ぎていつの間にか手玉に取られていたくらい」
「うわ、そんなマネージャー見てみたかったです。凄いな、その人」
「離れて随分経つからもしどこかでバッタリ…なんてことがあってもどうリアクションしたらいいかわかんない」
何をベラベラと胸の内を明かしてるんだろう。
しかも自分に好意を寄せてくれていた月島くん相手に。
端から見れば随分都合の良い女だ。
「ありのままで良いと思いますよ?相手の出方次第ってとこもあると思うけど僕だったら変わってないマネージャーだと嬉しいなって、好きだったままで居てくれると男心にはグッときます」
再び手を止めた私は頬杖をつきながら月島くんを見る。
「じゃあさ、もしすでに相手に新しい恋人が居たら…?そういうの男的には面倒だなって思う?」
そう聞くと月島くんも手を止めてこっちを見てくれた。
「その新しい恋人のことがもう本気になっちゃってたら惜しいことしたな…くらいは思います」
あくまで仮定の話だとわかっているのに恋人の存在や胸中まで妄想するだけでこんなにモヤモヤするものなのか。
自分で話を振っておきながら複雑……バカだ。
「だよね、でもそこでちゃんと失恋出来たなら前に進めるかも。的確なアドバイスありがとう、勉強になった」
「だから僕にしとけば良かったのに」
ボソッと言いながらまたパソコンに目を落としてる。
「そうかもね…」
「えっ!やっぱそうしときます!?」
「いや、この流れでそれはないでしょ」
「ちぇ……サラッと2回フッてきますね」
「それはごめん…」
「もうこの際良いっす……何回でもフラれます」
「重ね重ね申し訳ない…」