不埒に淫らで背徳な恋
第1章 【心の歪み、気付いてる?】
同じ100キロに設定しようとするのを横から120キロに上げてやった。
「あっ…!」
「出来るでしょ?これくらい」
「チーフって結構Sですね?」
「本当は130キロ打ってほしいけどね」
「僕、初心者ですよ?」
「え、本当に!?」
「はい、見たことはありますけどやったことはありません」
そう言えば構え方が変。
一緒に入って簡単に構え方を教える。
ていうかサラサラの前髪が邪魔そう。
持っていたヘアクリップで留めてあげたら意外に可愛くて。
「コレ貸してあげる」って言ったら距離感を間違えたか、思ったより顔が近くてお互いフリーズしちゃった。
やっぱり綺麗な目……胸が疼く。
「頑張って」と見送る。
フッと笑う口角、優しい視線。
教えた通りのフォーム。
何球か打ったら感覚掴んできた?
ちゃんと当たって飛ぶようになってきたね。
「クッソ…!あー!外れたー!」
無邪気に笑ったり真顔で集中したり、
こっち見たかと思えば「もう1回!」とねだる。
ダメだよ、もう2回目だよ?
いくら早めに仕事片付けたからって3回するとか……
「あ、ヤベ……僕がはしゃいじゃいました…」
可愛過ぎ。
もう、何か許しちゃう。
「最後だよ?」
そう言って甘やかしてしまう私。
ちょっと減速してあげようとしたら佐野くんが90キロ押しちゃって「え〜?」と不服ぶったら手を引かれ2人でバッターボックスへ。
「え?え?」
ちょっと待って?え、何!?
後ろに立たないで。
一緒に打つの!?
「2人でやってホームランとれたらアイス食べましょう」
「え?アイス?」
ていうか耳元で喋るから身構えてしまう。
「ほら、あそこに自販機ある……」
確かに売ってるけど……自販機のアイス。
「え?食べたいの?」
「あ、来ましたよ!」
つられてバットを振る。
案の定、2人だから打ちにくい。
背中……凄く熱くなる。
これはいくら何でも意識しちゃうでしょ。
「やりにくいよ、ムズ……」
何回か変なとこ飛んでっちゃって段々意地になってきた。