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不埒に淫らで背徳な恋

第8章 【本能のまま乱れ咲くのは愛と呼べるでしょうか?】





「ご馳走さまでした、おやすみなさい……春樹さん」




ずっと躊躇っていた名前呼び。
別れ際ならまだ呼べる気がした。
恥ずかしくてもうそっち見れないけど。
そそくさとマンションの中に入ろうとしたのにすぐ手を引かれた。




やっぱり降りてきた社長は私を運転席側に追いやりそっと口づけてきた。




逃げられない……というより逃さないキス。
ほんの数秒間……重なった唇は甘噛みを繰り返す。




激しくない初々しい初キス。
抑えてるのが伝わってきた。
少し震えてる。




「ごめん……抑えきれなかった」




手を握り締めながら肩を落としそう吐き出した。




自分でも正直驚いている。
こうなるのも想定内で……妙に落ち着いてて
別に嫌じゃなくて……むしろ仕向けてた。




遠くで自分に笑う。
私は…年上でも年下でも関係なく相手を支配したいんだ。
自分に熱くさせたいだけ。




「このまま帰るって言ったのに……」と漏らせば顔を上げてくれるでしょ?
ごめん…と今にも泣きそうな顔。
昼間はあんな堂々としてるのに……
今は崩れてる姿に高揚しちゃう。




「そんなにグッときましたか?春樹さん」




二度目は至近距離からの上目遣い。
でも胸を押して距離を取る。




「早速押し付けですね…?ペナルティ、差し上げましょうか?」




悪戯に笑う口元。
やっぱりサディストだなって頭をかいてる。
冗談ですよ。
そこは大人に振る舞いましょうね。




「おやすみなさい」と再び手を振った。




このまま時の流れに身をまかせてしまおうか。
忘れさせてくれるかはまだわからない。
でもこの先ずっと縛られるのは嫌。
越えなきゃいけない壁がある。




社長は壁の向こう側に連れて行ってくれますか…?




まだ見たのこともない世界を魅せてくれる…?




その手を掴んでみても良いですか…?




これは “ 逃げ ” なのでしょうか。
















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