不埒に淫らで背徳な恋
第9章 【無い物ねだりの先には報復だけでしょうか?】
(今日は体調が悪いので会えません)
朝一で春樹さんにメールを送る。
目覚めも悪く寒気が止まらない。
喉も痛い……熱は37.7℃……風邪だな。
しまった……季節の変わり目には特に気を付けているはずなのに。
マスクを着けて出社したものだから皆が心配してくれて有り難いが今は極力喋りたくない。
移すのも申し訳ないのでメモ書きで要件を伝えたりアポは繋がないでもらった。
幸いにも出掛ける案件はなかったので大人しく事務作業に徹底する。
とは言っても万全ではないから捗らない。
市販の薬を服用しても効いてる気がしない。
ご飯食べれない。
顔が火照る……掠れた声しか出ない。
見てられなかったのかその日は部長から早退するよう言われた。
皆に頭を下げて退社するも出て行くついでだからと田中くんが車を回してくれた。
「ごめんね…」
「3時からなんで充分時間あるんで送ります、寝ててください」
「ありがとう」
助手席を倒して寝かせてもらった。
頭もクラクラする。
少し走って起こされるともう自宅前だった。
フラフラなので玄関まで支えてもらう。
思った以上に体調が悪い。
さっきから田中くんに謝ってばっか。
一度来たことがあるから勝手はわかっているみたいで真っ先に寝室まで連れて行かれた。
体温計は?と聞かれゆっくり指差す。
ベット脇の引き出しに薬箱があってそこに入ってる。
ハイと手渡され何も躊躇なくブラウスのボタンを外す私に慌てて後ろを向いた田中くん。
ごめん……気にしてる場合じゃないの。
身体が熱くて、頭がボーッとしてる。
「38.3℃……」
「氷枕しますね、キッチンお借りします」
立ち上がる田中くんの手を引いて止めた。
「いいから……仕事戻って」
「ダメです、これくらいさせてください」
咄嗟に掴んだのは右手の薬指と小指。
マスクの中で呼吸も荒くなってる。
目線を合わせるようにしゃがんでくれた。
「今は甘える時ですよ?」と優しく髪を撫でられたら反論出来ない。
言われた通り素直に甘えることにした。
申し訳ない。