不埒に淫らで背徳な恋
第3章 【破滅的な愛でしょうか?】
「本っっっ当にすみませんでしたぁー!!」
会社に着くやいなや、90度に腰を曲げて再び謝罪してきた田中くん。
「もういいってば。ほら、顔上げて?ミーティングするよ!」
また泣きそうな顔してるからほっぺ抓って笑顔を促す。
「あの、僕が言ったことは……」
「あ〜覚えてないや…何か泣いてた記憶しか…」
「いえ、それだったらいいです…!」
「みなみちゃんに動画見せてもらおうか?」
「いや、ダメです!見なくていいです!」
社内にドッと笑いが起きる。
しっかり覚えてるけどね?
「おはようございます」
「おはよう、佐野くん」
すかさず田中くんは彼にも謝り倒している。
飲み過ぎですよ?って怒ってたっけ。
今は笑顔で話せてるから心配はなさそうね。
先輩なのに弄られキャラなのは田中くんの人の良さが全面に滲み出てるからだ。
午前中は各方面へ営業に出かける。
午後からは事務や社内ミーティングすることが多いかな。
佐野くんが加わりチームとしてまた新たに結束が強まったように思う。
「畠中チーフ、そろそろ行きましょうか」
何気ない挨拶や会話でも胸がキュン…となってるなんてことは全然顔に出してない…はず。
真剣な表情も一瞬、間があくくらい見惚れちゃってるの…気を付けなきゃな。
社用車に乗り込み、二人きりになった途端に甘い声。
「今日の服も可愛いです」
「あ、ありがと」
ストレート過ぎる急な不意打ちに戸惑う。
そんな佐野くんは常にスーツ姿。
これがわざとなのかそうでないのかは定かではないけど……
「あれ、出ないんですか?」
シートベルトもしない私をキョトンとしながら見てる。
会社の駐車場でこんなこと絶対しない。
しないのよ……?
でもそのまま出向いたらやっぱり気になるし、先方さんにも失礼だから。
スッと伸ばした両手は彼の胸元。
曲がってたらダメじゃない。
真っすぐに直したネクタイ。
近付いた身体と視線はほんの一瞬で離れた。
「ありがとう…ございます」
「よし、行こっか」
「待ってください…!10秒だけ」