不埒に淫らで背徳な恋
第3章 【破滅的な愛でしょうか?】
「佐野くん……」
慌ててブライダルチェックの結果用紙をカバンに直す。
どうしたの?って聞く前に抱き締められた。
「ちょっと佐野くん…!会社だから」
「もう誰も居ません……一人で何してたんですか?どうして…目が赤いんですか?」
言われて初めて気付いた。
私……泣いてたの?
稜ちゃんに申し訳なくて?
佐野くんに会いたくて?
こうして抱き締められて?
「もう帰るから……」
「10秒だけ…!」
こんなとこ、誰かに見られたらヤバい。
誰も守れなくなる。
10秒経ったら離れる。
そのまま帰る。
流されちゃダメ。
求める資格なんてない。
今の自分じゃダメ……わかってるでしょ?
これは確実に………
「無理です……もう瑠香さん不足でどうにかなりそう」
甘い蜜に誘われて動けない身体は同じ過ちを犯すの……?
顔を背けて僅かな抵抗。
デスクに追いやられ逃げ場を失う。
足の間に入るほど密着して顎を持ち上げられた。
欲しがる視線に耐えれない。
「まだ勤務中だよ?」
「待てません」
帰ったはずなのに……待ってたの?
どうして……戻って来たのよ。
近付く唇を拒めそうにない。
これじゃ何も変わらない。
「待って……やっぱりこういうのダメ」
優秀な佐野くんならわかるでしょ?
これがただの恋愛なんかじゃないことくらい。
押し返してパソコンをカバンに入れた。
ジャケットを羽織り退社準備に入る。
シュン…とした佐野くんと一緒にオフィスを出ようとした手を止められた。
ちょうどドアに触れていた手。
そのまま中から鍵をかけて電気を消した佐野くん。
「何で……見て見ぬふりするんですか?僕の気持ち無視しないでください」
背後で言わないで……揺らいでしまう。
触れられたら……もう終わり。
目を閉じて邪念を追い払うのに時間も与えてくれない。
抱き締めないで……耳にキスしないで。
そんな耳元で吐息感じたら熱くなる。
「ずっと……こうしたかった」
私もだよ……佐野くんを感じたかった。
一度味わってしまった感覚が一瞬で蘇る。
それが怖かったの………
戻れなくなるのわかっていたから。
必死に遠ざけようとして勝手に藻掻いてた。