不埒に淫らで背徳な恋
第3章 【破滅的な愛でしょうか?】
私がサインを出したら完全に崩壊する。
今までの景色じゃなくなる。
佐野くん、わかってる……?
わかって行動してるの……?
私が振り向いて受け入れたなら、
それは確実にクロだよ。
一度や二度じゃない。
改めて認めることになるの。
気の迷いなんて言えなくなる。
たった一度でも過ちは過ちだけど
互いに曖昧にすることだって出来たはず。
普通に上司と部下で居れたじゃない。
それが何故続けられないの…?
何故踏み込んで来るの…?
何故……戻れなくするのよ………
名札プレートの裏にある認証コードをかざして退勤時間を読み込ませる。
そのままカバンをそっと置いて暗闇の中見つめ合う二人。
「無視してたわけじゃない……認めるのが怖かった」
揺れる瞳はキミから逸らせない。
「我儘言って困らせてすみません」
泣きそうに言うから首を振るだけで精一杯。
こんなこと言わせたくないのも全部綺麗事だ。
避けられないの………
「でも僕、一緒に堕ちるって言いました……瑠香さんはその手を放すんですか?」
そんなはずないじゃない…!
ネクタイを引き寄せドアに手を付いた彼にあと数ミリで唇が触れる距離。
「ズルい……快くん……」
そう漏らすと額を合わせて互いに目を閉じた。
手放せないの知ってるくせに。
両手に触れてる愛しい顔。
私にほんの勇気があれば突き放せたのだろうか。
この瞳に捕まっても理性が働いたのだろうか。
「瑠香さん………僕を選んで?」
嗚呼…………ダメだ。
この距離、保てなくなる。
さっきと表情がまるで違う………
自信に満ちた瞳はどこにいったの?
いつものように笑ってよ。
あの笑顔見せて?
泣かないで……………
「僕を、見捨てないで」
頬に触れていた指に一粒の涙がかかる。
拭っても溢れてくるよ………
「瑠香さんが遠い……そんなの嫌です」
その顔で泣かれたら回避出来ない。
どうしても手に入れたくなる。
頬濡らす彼の手を自分の腰に回させて……
「キスしたら……その涙は止まるの?」