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不埒に淫らで背徳な恋

第3章 【破滅的な愛でしょうか?】





最後の抱擁が一番切ない。
回した手が離れたらもう終わり。
私たちの関係も元に戻る。




余韻を精一杯感じて別れを惜しむ。




俯いたまま指輪も戻してくれた。
カバンを持ったらもう振り向かないでおくね…?




「先に帰るね?戸締まり宜しく」




背中越しに聞こえた返事。




「お疲れ様」とだけ言い残し会社を出た。
フロアに鳴り響くヒールの音に虚しくなる。




離れたくない。
離れたくないからこそ完璧でなければならない。
そう、誰にも知られちゃいけない。




隠すなら徹底的に。
ほんの少しの綻びが破滅に追い込む。
手放したくないなら尚更……




私は道徳に反しても壊滅的な愛を選ぶ。




改札を通れば手を振る影。




あ………稜ちゃん。




また今日も待ってくれてる。
残業だって送ったきり退社メールなんてしてないのに。
時刻は夜の9時過ぎ……ずっと待ってたの?





「残業お疲れ様、一緒に帰ろう?」




何の疑いもない笑顔。
自分だって疲れてるくせに。
さり気なく繋がる手と手。




「ごめんね、待っててくれたなんて知らなくて…」




「一旦帰ったんだけど、やっぱ電気ついてない部屋に入るの寂しくてさ…」




照れながら笑う横顔。
ずっと、私の好きなアングルだった。
胸がチクチク痛みながらも笑って誤魔化すの上手くなってきたな。




ごめんなさい。
その指輪をした手、さっきまで他の人と繋いでたんだよ?





稜ちゃんが待ってくれている間、私は他の人とセックスしてた。




最低でしょ……?




それでいてこの手を振り解けないでいるんだからどうしようもないね。




「瑠香、疲れたろ?ご飯作るよ、鍋だけど」




「うん……ありがと」




勘付かれてはいけない。
もう一人の私になって優しく微笑むの。
稜ちゃんの知っている私に戻らなくちゃ。
自然と優しく出来る自分に驚いてる。




自然に寄り添って自然とボディタッチしたりして笑い合う。
何鍋にするか議論して仲良く野菜を選んだり、一緒に飲むお酒をチョイスし合ったり……








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