不埒に淫らで背徳な恋
第4章 【許されぬ略奪でしょうか?】
「えっ!?チーフ、出張行っちゃうんですか!?」
「え、そうだよ?あれ、前にも言ったはずだけど?2日間居ないから宜しくね」
出張と言っても本社に行って役員との顔合わせ、向こうの店舗回ったりするいわゆる勉強会…みたいなものかな。
毎年行ってて結局最後は普通に飲むだけだけど福岡だからお酒美味しいんだよね。
稜ちゃんとも2日間会わないで済む。
「ただいま戻りました」
「あ、佐野っちおかえりー!聞いてよ、今週末チーフ居ないよ?」
出先から戻って来た佐野くん捕まえて言うことじゃないでしょ。
ていうか、直接言おうと思ってたんだけどこんな形で知らせることになろうとは。
さぞかしお怒りでしょうか…?
えっ!?てな顔して私が書き込んでいる予定表を凝視してる。
木曜日、金曜日と福岡出張。
勿論、私一人で。
思いっきり羽伸ばすぞー!って思っていたら。
「何かあれば連絡します」
あれ?意外と冷静。
最近の佐野くんはちょっとドライ。
でもそれくらいで良い。
チーフの真似してるだけです…って言ってくれるね。
離れるんだから少しくらい寂しそうにしてよね?
こっちが拗ねちゃうぞ!?
なんてね。
「気をつけて行って来てください」
甘い声で見送ってくれるんだね。
「畠中、飲み過ぎないようにな」って部長、余計なこと言わないでください。
遊びに行くんじゃないんですよ?
いや、半分は……飲み会だけども。
「飲むんですか?」
ボソッと背後から拗ねた顔。
待って……私にだけ見える角度でそんな顔ズルい。
「仕事で行くんだってば」
「顔に飲むって書いてます…」
「えっ!?そんなわけないでしょ」
「冗談です、チーフがいない間も頑張りますので」
「宜しくね」
最後は皆に向かってそう言った。
パッと行ってパッと帰って来るいつもの出張。
一泊二日の福岡県。
小さめのキャリーバッグを引いて新幹線で向かう。
毎年行ってるから稜ちゃんもすんなり見送ってくれるし、ランチや旅館の部屋に景色等…写真に撮って送る。
どちらかが出張や旅行行ったりするとこうして写真を送り合ったりするしそれが暗黙のルールだった。