不埒に淫らで背徳な恋
第4章 【許されぬ略奪でしょうか?】
店舗視察も終わり、夜の飲み会が始まろうとしている。
予約しているお店に向かう途中で携帯が鳴り響いた。
え、佐野くんから…!?
「すみません、会社からなんで先に行っててください」
皆とは離れてすぐ電話に出た。
__はい、畠中です
__チーフ、今…大丈夫ですか?
声聞いただけでヤバい……心が踊る。
かけてきてくれないかな?ってちょっと期待してた。
__佐野くん……どうしたの?何かあった?
__いえ、今ちょうど出てて
__そうなの?順調?
__はい。すみません、お忙しい時間に
__大丈夫だよ、今から例の、飲み会だから
__あまり飲み過ぎないでくださいね
__部長と同じこと言わないでよ
電話越しで笑い合う。
鼓膜をかすめる低い声は瞬時に私を熱くする。
かけてきてくれた……それが何よりも嬉しい。
__チーフ………僕に喝入れてくれませんか?
__え…?
お願いします…って耳元で言われてるみたい。
喝って何を言うの?私に何が出来る?
どんな言葉がキミを笑顔にするの…?
そんな気の利いた言葉なんてすぐに出てこない。
だったら素直に思うことを言おう。
だって今……こんなに胸が熱い。
__佐野くんの声聴きたかった。かけてきてくれて嬉しい……ありがとう
__いえ、我慢出来なかった僕の負けです
__ちゃんと佐野くんの元に帰るから……それまで任せたからね?帰り……待ってて
__はい。凄く、頑張れそうです
__なら良かった……もう行かなきゃ
__あの、終わったらまた……連絡もらえたりしますか?ちょっとご相談したいことが
__え、仕事のことなら時間気にしないで今聴くけど?
__いえ、1日の最後に……声聴きたいだけです
そうだった………
平気でこういう甘いセリフ言えちゃう人なんだ、佐野くんは。
胸の奥、締めつけられる。
__仕方ないな……聴かせてあげよう
__嬉しいです
__じゃあもう……切るね?
__待ってます……何時でも
__遅くならないようにする