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社長と私

第3章 最後にもう一度だけ

職場と私の家のちょうど真ん中あたりに、小さいカフェがあった

中はお客さんも少なくて、私たち2人の待ち合わせ場所にしていた

ここから何度も社長の車に乗ってラブホテルへと向かった

けどもうそれも終わりだ、終わりにしなくちゃいけない

今ならまだ引き返せるのだから

ぎぃー

ドアが開いて、社長が入ってきた

社長は私の向かいに座り、コーヒーを頼んだ

「話って?」

「…」

頭の中で何度も言っていたのに、泣きそうになってしまって上手く言葉がつなげない

「…終わりにしたい?」

「…はい」

社長の顔を見ると、悲しいような寂しそうな顔をしていた

「最初に話した通り、あなたがやめたいと言ったら終わりにしようと言っていたもんね…」

コーヒーを飲みながら私たちは黙った

「仕事はどうする?」

「仕事は続けたいです…勝手かもしれませんが」

「いやいや、下村さんみたいにしっかり働いてくれる子を探すのは大変だから、そうやって言ってくれて嬉しいよ」

「ありがとうございます…」

自分から言ったくせに、寂しさが込み上げてきた、社長のコーヒーを飲む手をじっと眺めた

あの指が私の身体を何度喜ばせてくれたのだろう

「最後に…その…思い出を作りたいんだけど、だめかな?」

どくんと胸が熱くなった

「僕にとってきっとこれが最後の恋だから…いい仕事して、思い出として残したいんだ」

最後に抱かれたい…しかし、もう一度身体を重ねたら、自分の意思が覆ってしまいそうで怖かった

でも…

「分かりました」

社長は目尻を下げ妖しく笑ったが、私はそれに気づかなかった

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